【キャドリル君の冒険 ~DAC(ダック)大魔王と失われたコマンド~】chapter1.キャドリル君、旅立ちの朝

これは誰も知らない小さな島のお話。
その島にはマンドリルだけが暮らしている村、マンドリ村がありました。

        

キャドリル君以下(キ)「おじいさん!こんな遅くまで図面を描いているの?」

      

マンドリ村で、唯一の建築士であるおじいさん。
村のマンドリルたちに頼まれて、毎日遅くまで図面を描いていました。

      

「いつかおじいさんの手伝いができる立派な建築士になるんだ。」

        

おじいさんの背中を見て育ったキャドリル君。
彼はこっそりキャドリルで、AutoCADを学習していたのです。

ある日、おじいさんがキャドリル君に言いました。

      

キャド爺以下(爺)「わしもだいぶ歳を重ねてしまったからのお……。今のままでは先行きが不安じゃ。だから、マンドリ村に建築士を育成する学校を建てようと思うんだ。いったいどうしたものか……。」

「おじいさん!僕が手伝うよ!」

     

おじいさんのために、キャドリルで学んだ知識を活用できる時が来たのです。
キャドリル君はおじいさんをパソコンの前に呼び、試しに描いた図面を見せました。

     

「これはすごい!これはなんていうものなんじゃ?」

     

「これはね。AutoCADっていうんだよ。今はもう……手描きの時代じゃなくなったんだ。」 

      

「そうかそうか。新しい時代が来ているんじゃな。これは安心じゃ。では、さっそく一緒に学校の図面を描くとしよう。」

      

おじいさんの役に立てる。キャドリル君は嬉しくてたまりませんでした。

       

「さあ、どこから始めようかな。」

        

CADを立ち上げて作業を始めようとしたその時でした。
荒々しい風が吹き、不穏な空気がマンドリ村を包み込んだのです。

       

      

「お前がこの村の建築士、キャド爺とキャドリル君か!」

      

「君は誰だい?!」

        

DAC大魔王(以下魔王)「俺様は、DAC大魔王だ。世の中のCADを全て食い尽くしてしまうために、まずはこの村に降臨したわけだ。お前の後ろにある、そのパソコンを見せろ!」

       

「だめだよ!やっとおじいさんと一緒に図面を描ける時が来たのに!僕のCADを奪わないで!」

       

大魔王「お前らは何か建てるつもりだな?やはりそうか……。この村に降り立って正解だった。こうしてやる!」

        

DAC大魔王は、キャドリル君のパソコンめがけて、怪しげな魔法を放ちました。
するとAutoCADのコマンドが全て消えてしまったのです。

       

大魔王「さあ、これでも図面が描けるというのか? それでも図面を描きたいのなら、地の果てまでコマンドを探しに来い!工期に間に合うかどうかはお前次第だ。クエックエックエッ。」

        

DAC大魔王は声高らかに笑い、消えていきました。
キャドリル君は慌ててAutoCADの画面をのぞいてみると、見慣れたコマンドが全てなくなっていました。

      

「ほんとうにコマンドがなくなってしまった……。ようやくおじいさんと一緒に、図面が描けると思っていたのに……。僕はどうしたらいいんだ?」

      

「キャドリル君、無理するでない。相手はDAC大魔王じゃ。わしがひとりで図面を描くから、大丈夫じゃよ。」

    

「おじいさん……。 僕は……。 」
「おじいさんと一緒に学校を建てたい!だからコマンド探しの旅に出るよ!必ずコマンドを取り返してくる。約束するよ。」

   

「キャドリル君……。」

     

おじいさんはキャドリル君の決然たる瞳を見て、コマンド探しの旅を止める言葉を飲み込みました。
いつまでも子どもだと思っていたら、こんなに立派になりおって。

そして夜が明け、キャドリル君はコマンド探しの旅に出ることにしました。

     

「おじいさん、行ってくるよ!僕が帰ってくるまで待っていて。」

    

「必ず無事に帰ってくると約束しておくれ、キャドリル君。」

   

「うん。必ずコマンドを取り戻してくるよ。」

     

おじいさんが見守るなか、キャドリル君はコマンド探しの旅に出たのでした。

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